SLEEP × 三機四調 | STATISTICAL LOGIC

統計ロジック ─ 効果検証と量産判定

睡眠満足度を主目的変数に、配合因子の寄与をデータで示し、量産可否を判定する。設問の詳細=op/survey-logic.html、判定全体=op/model.html

検証のねらい

量産の Go / No-Go を、役員会・OEM先に客観データで提案できる状態にする。主観評価は人により基準がぶれ、個人の元々の睡眠も異なるため、同一被験者の服用前後の変化量で個人差を相殺し、数理モデルで「満足度に効いたのは配合か・用量か・タイミングか」を切り分ける。人数を増やせば小さな差も有意になりうるので、p<0.05 に加えて効果量(効きの大きさ)でも判断する。

「どうでしたか?」と聞くだけとの違い

「飲んでどうでしたか?」を5段階で聞いて平均や「良かった%」を出すだけでは、量産の判断には使えない。まず「ふつうの言葉」で何をするかを示し、その右に正式な呼び名(専門用語)を添える。用語の中身は後ろの「解析モデルの選定」「用語」で説明する。

「ただ聞くだけ」だと何が足りず、本設計でどう直すか
ただ聞くだけ だと…(弱点)本設計では こうする(ふつうの言葉)→ 呼び名(専門用語)
0出発点:「飲んでどうでしたか?」を5段階で聞き、平均や「良かった%」を出す。
1人によって元が違う:もともとよく眠れる人と眠れない人が混ざり、「良い」の感じ方も人それぞれ。同じ人の「飲む前」と「飲んだ後」をくらべ、そので効果を見る。前後比較(在宅で測る=HUT)
25段階のものさしが等間隔でない:「4」は「2」の二倍良いわけではないのに、平均すると歪む。点数を平均せず、どれだけ上の段階へ動いたか(順位)として扱う。順序尺度 / 順序ロジスティック回帰
3たまたま・思い込み:人数が少ないと、偶然や期待だけで良い結果が出る。「偶然では起きにくいか」と「どれだけ大きく効いたか」の両方を確かめる。有意性(p値)+ 効果量
4何が効いたか分からない:「良かった」だけでは、配合・量・飲む時間・誰に効いたのかが見えない。どの要素が効いたかを計算で切り分け、次の改良に使えるようにする。説明変数の寄与(オッズ比)
5日によってぶれる:その日の体調で評価が上下する。同じ人を期間中くり返し測り、日々のぶれをならす。反復測定 / 混合効果モデル
6そのままでは決められない:「好評でした」では役員会・OEM先に出せない。合格ラインを先に決めておき、数字で「量産してよいか」を判定する。Go基準(5軸)

まとめ:ただ聞くだけ=「印象を集めただけ」。本設計=人による差をそろえ/ものさしを正しく扱い/偶然を除き/効きの大きさを示し/何が効いたかを切り分け/量産判断に使えるデータにする。

検証プロセス

① 設計
変数・比較を定義
主/副次/受容/説明変数、前後比較、社内→顧客の2段階
② 回収
在宅テスト(HUT)
Webアプリで服用前後を取得
③ 解析
モデル推定
寄与・有意性・効果量を算出
④ 判定
Go / No-Go
5軸をすべて満たすか照合

回収(アンケート)の方針

後工程の前処理を最小にするため、入口(Webアンケートアプリの入力時)で品質を担保する。

必須回答(未入力では送信できない)/5段階は選択式/入眠潜時などの数値は範囲制限
・服用前と後を同一の被験者IDでひも付け、日付で反復測定を記録。
・未回答にはリマインド社内テスト → 顧客テストの2段階で回収。

この結果、空欄や範囲外の値は“その場で”入らない。後工程(解析手順S1)で残るのは、前後のペア化/脱落(後を測らず前後が揃わない人)の扱い/明らかな矛盾・手抜き回答の確認/解析用への整形だけ。

専用ウェブアンケート(服用時の効果測定)

ヤクミンを飲む人が答える専用アンケート。どの処方を出すか決める「判定アンケート(水の鏡30問)」とは別物。在宅(HUT)で 服用前 → 期間中(毎朝) → 期間後 に同じ睡眠指標を測り、前後の変化で効果を見る。回答は必須・選択式・数値は範囲制限、5段階は両端ラベル、毎朝はプッシュ通知でリマインドする。

タイミング構成
いつ頻度目的
① 服用前(ベースライン)1回飲む前の睡眠の状態を記録(比較の基準)
② 服用期間中(睡眠日誌)毎朝・2〜4週間昨夜の睡眠と服用を記録
③ 期間後(総合・受容性)1回通しての満足度と、不快感・飲みやすさ・継続意向
① 服用前(ベースライン)─ 直近の睡眠
質問文回答方法選択肢・範囲
ここ最近、眠りにどのくらい満足していますか5段階(単一選択)1 とても不満 〜 5 とても満足
布団に入って寝つくまで、どのくらいかかりますか数値入力0〜180 分
夜中に目が覚める回数は数値入力0〜10 回
起きたときの爽快感はどうですか5段階(単一選択)1 とても悪い 〜 5 とても良い
ふだんの就寝・起床時刻(任意)時刻入力--:-- 〜 --:--
② 服用期間中(毎朝の睡眠日誌)─ 昨夜について
質問文回答方法選択肢・範囲
昨夜の眠りの満足度は5段階(単一選択)1 とても不満 〜 5 とても満足
寝つくまでにかかった時間は数値入力0〜180 分
夜中に目が覚めた回数は数値入力0〜10 回
起きたときの爽快感は5段階(単一選択)1 とても悪い 〜 5 とても良い
昨夜ヤクミンを飲みましたかはい/いいえ飲んだ/飲んでいない
飲んだ量・就寝の何分前に飲んだか数値/選択用量(粒)・就寝○分前
③ 期間後(総合・受容性)
質問文回答方法選択肢・範囲
この期間を通して、眠りの満足度はどうでしたか5段階(単一選択)1 とても不満 〜 5 とても満足
飲んで不快感(味・におい・胃の不快等)はありましたかはい/いいえ+自由記述有/無(有の場合は内容)
カプセルの飲みやすさは5段階(単一選択)1 とても飲みにくい 〜 5 とても飲みやすい
これからも続けて使いたいですか5段階(単一選択)1 思わない 〜 5 強く思う

前後比較=①ベースライン と ②③ の変化量で効果を見る。主目的=睡眠満足度の前後変化。判定アンケート(処方決定)=op/survey-logic.html

開発アンケート サマリー(理論 → 質問 → 基準 → 仮説)

効果測定アンケートを一望する。各測定項目を、睡眠と三機四調の理論・今回聞きたいこと・実際の質問案・評価基準・予想される仮説で整理した。

開発(効果測定)アンケート 一覧
測定項目睡眠 × 三機四調の理論今回聞きたいこと 実際のアンケート案評価基準予想される仮説
睡眠満足度主目的四調(気血精水)の調いと三機(自律神経・ホルモン・免疫)の安定が、総合的に主観へ表れる。飲んで眠りの満足が上がるか(製品価値の核)。「眠りにどのくらい満足?」5段階(1 とても不満〜5 とても満足)/前・後前<後で有意に改善 かつ 後 ≥3.8服用後に上昇。パターンに合った処方ほど上昇が大きい。
入眠潜時寝つき入眠=交感神経の高ぶり・気滞/気虚・深部体温。三機=自律神経、薬理=GABA。寝つきが速くなるか。「寝つくまでの時間」数値(0〜180分)/前・後前後で短縮(変化量<0・効果量あり)入眠タイプ(気滞・交感優位)で短縮が大きい。
中途覚醒回数維持維持=心肝の血虚で『神』が浮つく/夜間の自律神経サージ。三機=自律神経。夜中の目覚めが減るか。「夜中に目が覚めた回数」数値(0〜10回)/前・後前後で減少維持系(血虚)パターンで減少が大きい。
起床時の爽快感深さ熟眠=精・腎/徐波睡眠/グリンパティック。三機=ホルモン・回復。朝の回復感が上がるか。「起きたときの爽快感」5段階(1 とても悪い〜5 とても良い)/前・後前後で上昇熟眠系(精虚)パターンで上昇が大きい。
不快感受容性製剤・安全(三機四調の外。商品として成立する条件)。飲んで不快がないか。「不快感(味・におい・胃の不快等)はあったか」はい/いいえ+自由記述/不快感回答率 ≤5%カプセルで味・においをマスキングし、低率にとどまる。
飲みやすさ製剤カプセル化=「飲める形」。物理・検証層の受容性。カプセルが飲みやすいか。「カプセルの飲みやすさ」5段階(1 飲みにくい〜5 飲みやすい)/低評価が少ない(物理適性 規格内の一部)カプセルで高評価。葉・煎じより飲みやすい。
継続購入意向事業受容性・LTV(事業価値)。続けて買いたいか。「これからも続けて使いたいか」5段階(1 思わない〜5 強く思う)/高いほど良い(参考指標。満足度と整合)満足度と正の相関。満足が高い人ほど継続意向も高い。
服用記録説明変数配合・用量・服用タイミング=「何が効いたか」の帰属(統計)。いつ・どれだけ飲んだか(効果の帰属用)。「昨夜飲んだか/量/就寝何分前」選択・数値/毎回欠測なく取れ、配合寄与の推定に使える就寝前の適切なタイミングを守るほど効果が高い。

Go基準(製品):睡眠満足度 ≥3.8/不快感 ≤5%/物理適性 規格内/p<0.05+効果量/納品100%。判定アンケート(処方決定)=op/survey-logic.html、判定ロジック全体=op/model.html

測定する変数

解析変数(目的・受容性・説明)
区分変数
主目的変数睡眠満足度5段階リッカート(順序)
副次目的変数入眠潜時(寝つくまでの時間)分(連続)
中途覚醒回数回(カウント)
起床時の爽快感5段階(順序)
受容性不快感の有無有/無(二値)
継続購入意向5段階(順序)
説明変数生薬配合比・用量・服用タイミング・被験者属性(9パターン・年代・性別・月経・テスト段階)連続/カテゴリ

解析モデルの選定(候補と採否)

「どのモデルを使うか」は、扱うデータの性質から逆算して決める。本件の特性を満たすものを残し、満たさないものを落とした。

選定基準(本件データの特性)
① 主目的=睡眠満足度は順序尺度(等間隔でない)/② 同一被験者の服用前後=反復測定/③ 効きやすさに個人差が大きい/④ 説明変数が複数(配合比・用量・タイミング・属性)かつ副次の症状指標も複数。
候補モデルと採否 ─ 基準に照らした判断(候補8)
候補概要採否理由
対応のあるt検定/平均比較前後の平均差を見る最も単純な方法×順序尺度を等間隔として扱ってしまい、個人差・複数の説明変数を切り分けられない。
Wilcoxon符号順位検定順序データの前後差(ノンパラ)×前後差は見られるが、配合など複数要因の寄与の大きさを推定できない。
線形重回帰(OLS)連続な結果へ各要因の係数を推定順序の満足度には等間隔仮定が難。連続な副次指標の集約に併用
主成分/因子分析複数指標を少数の軸へ集約◎ 補助入眠潜時・中途覚醒・爽快感をまとめ、多重共線性を低減。
順序ロジスティック回帰順序の結果へ各要因の寄与をオッズ比で◎ 主基準①(順序尺度)に最も適合。配合・用量の寄与を解釈しやすい。
一般化線形モデル(GLM・ポアソン等)カウント等の分布に合わせた回帰中途覚醒「回数」(カウント)の解析に必要時のみ用いる。
混合効果モデル(LMM/GLMM)固定効果+個人をランダム効果で分離◎ 主基準②③(前後反復+個人差)に適合。本件の検証の軸。
ベイズ階層モデル事前分布を置いた階層推定×(今回)小標本では有力だが、解釈・工数・説明コストが高い。標準的な頻度論で十分なため今回は外す。

選定の流れ(基準でどう絞ったか)

START
データ特性を確認
順序+前後反復+個人差+多要因
除外
単純検定を落とす
t検定・Wilcoxonは寄与の切り分け不可
主軸
2モデルを採用
順序ロジ(順序)+混合効果(反復・個人差)
補助
必要に応じ追加
主成分(副次集約)/GLM(カウント)

結論(採用):主軸=順序ロジスティック回帰混合効果モデル。補助=主成分/重回帰(副次指標)、必要時GLM(カウント)。ベイズ階層は説明コストの理由で今回不採用。

判定のポイント

有意性と効果量(両方で見る理由)
指標見るもの留意
p値(有意性)その差が「偶然では起きにくい」か人数が多いと小さな差でも有意になりやすい。多重比較時は補正。
効果量差の「大きさ」(実用的に効くか)有意かつ十分な大きさで初めて採用に値する。

量産(Go)判定 ─ 5軸

どれか1つでも欠ければ No-Go。すべて満たせば Go。

≥ 3.8
睡眠満足度(5段階)
主目的変数のGo閾値
≤ 5%
不快感回答率
商品としての成立条件(受容性)
規格内
物理適性(充填重量ばらつき・崩壊時間・飲みやすさ・外観)
物理・検証層(T6)由来
p<0.05
統計的有意 + 効果量
偶然でない、かつ実用的な大きさ
100%
納品完全性(仕様書・統計レポート)
全層

全クリア → Go(量産)→ OEM向け技術仕様書を生成。未達 → No-Go(再設計、または中止も正当な結論)。

解析手順

手順(前処理 → レポート化)
step内容出力
S1整形・品質チェック(前後のペア化、脱落の扱い、矛盾・手抜き回答の確認)解析用データセット
※空欄・範囲外はアプリ入力時に防止済み
S2記述統計(前後・パターン別)平均・分布・前後変化量
S3モデル推定(順序ロジ/重回帰・主成分/混合効果)係数・オッズ比・p値・効果量
S4Go基準への照合Go / No-Go と根拠
S5レポート化統計レポート・開発報告書(C4・C5)

用語

用語の補足
用語説明
順序尺度1〜5のように順序はあるが間隔は等しいと限らない値(満足度など)。
前後比較(HUT)在宅使用テストで、同じ人の服用前と後を測り変化量で効果を見る設計。
オッズ比その要因があると「上の段階へ行きやすさ」が何倍になるか。
固定効果/ランダム効果全員に共通する効き/人ごとのばらつき。混合効果モデルで分離する。
効果量差の大きさそのもの(例:Cohen's d、オッズ比)。p値とは別物。